こんにちは、シロウサギです。
今週、BYDが「日本市場向けの軽EVを2026年に投入する」と発表しました。BYDですが、2024年の世界販売台数は427万2145台に急成長し、380万7311台のホンダと334万8687台の日産自動車、324万8317台のスズキを初めて上回りました。EVメーカーとして世界一に躍り出たBYDが、あえて“儲からない”と言われる日本の軽自動車市場を選んだ。
その背景にあるのは単なる販売戦略ではなく、**自動車そのものの作り方=構造の違い**です。
今週は、「なぜBYDはそのマーケットに乗り込んでくるのか?」をテーマに掘り下げます。
そもそも日本市場における軽自動車事業は、利益率が低いマーケット。1台100-200万円程で、ホンダのN-BOX、スズキのスペーシア、ダイハツのタントなどが人気車種として挙げられます。特に地方では、生活者の足として欠かせないインフラになっています。日本の自動車販売台数のうち、軽自動車販売は30-40%を占める市場規模で結構大きい。ただマーケットの特性として販売価格を上げることは難しい上に、小さなボディながらも日本独自の厳格なボディサイズ基準、衝突安全基準や走行性能をクリアしている必要があるため、利幅はどうしても低い傾向にあります。大儲けはできないけど、、、毎年確実に需要がある底が硬い市場なんです。
その安全基準や利益率の低さは、国産メーカーにとては、ある種、参入障壁となっていたんですね。聖域でした。外資メーカーにとっては、全然美味しい市場ではなかった。では、なぜBYDは、そんな“儲からないマーケット”に参入するのか?
その理由は、BYDは世界で最も開発コストを圧縮できるEVメーカーであるからです。どういうことか?BYDは垂直統合型のEVメーカーです。バッテリーから車体、インバーター、制御系、車載OS、生成AI系まで全部自社開発している。バリューチェーン全体を自前で持っているんです。
・電池:LFP(リン酸鉄リチウム)を自社製造
・車体:コンパクトEV向けプラットフォームを標準化
・OS:DiLinkという車載OSで、OTAやアプリ連携を先行
・ソフトウェア:NVIDIA Orinや自社AIと連携し、車内UXも強化
*DiLinkは、スマホのようにアプリのインストールやUIのカスタマイズが可能で、ユーザーごとの車内体験を柔軟に変えられます。
BYDは、実は電池メーカーとして20年以上前から日本に進出していました。結構驚きですよね?彼らは事業を電池開発から、EV開発に大幅転換して成功している企業なんです。つまり、コスト、供給、UI/UX、安全性、整備性すべてを自社内でコントロールできる。 テスラもこの垂直統合モデルになっていますが、、、実は世界のEV市場は、主要鉱物であるリチウム、コバルト、ニッケルやEVバッテリーセル生産で中国に60-70%依存しています。バッテリーの観点で、中国のBYDが圧倒的に優位なのです。
国産メーカーが系列部品メーカーとの分業制度に縛られている間に、BYDは“垂直統合”でこの領域を飲み込んできたわけです。商品力ではなく、設計思想と組織の違いなんです。BYDの武器は“車”ではなく、この構造です。
BYDの参入は、国産メーカーの構造的な弱みを改めて浮き彫りにします。
ただBYDにとって、この日本市場の攻略が容易というわけではありません。国産車の信頼性やイメージや日本市場の知識、販売チャネルなど、日本の独自性に対していかに対処していくか、がポイントになります。
BYDが日本の軽EVに参入する。 これだけ聞くと、地味なニュースに見えるかもしれません。でも実際には、これは日本のOEMが“構造で勝てるかどうか”が試される分水嶺。クルマは、単なる乗り物ではなく、「ソフトウェアで定義されるモビリティ」へと進化しつつあります。 これは、勝ち筋が変わったというシグナルです。
それではまた来週。 シロウサギでした。