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前を向くMazda、過去に揺れる日産
変革期の選択と迷走から見る、自動車産業の現在地
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シロウサギ
2025/03/23

こんにちは、シロウサギです。


私は東京都内のソフトウェア企業で働く30代男性。主に国内の自動車メーカーさんにソフトウェアを販売しています。

「昔ながらのハード屋が、ソフトウェアなんて買うの?」とよく聞かれます。でも実際、日本の伝統的な自動車メーカーがいま、猛烈な勢いでソフトウェアに投資してるんです。

クルマづくりの現場は、まさに100年に一度の大変革期。モノづくりの伝統と、AI・ソフトウェアといった最先端テクノロジーが交差する、めちゃくちゃ面白いフェーズに突入しています。


🔍先週の注目トピック


🚙 Mazda、絶好調の裏側

2025年Q3決算:

  • 売上高:3兆6,894億円(前年比+3.4%)
  • 営業利益:1,483億円(前年比−25.9%)

“減益”なのですが、実態を見れば十分に好調と言える内容です。特に注目すべきは、海外販売比率の高さ(約85%)と北米市場でのSUV需要です。

Mazdaは「CX-50」「CX-90」など北米専用SUVを現地生産・販売しており、好調な米国市場の波にうまく乗れています。

また、EVシフトに出遅れているとの指摘もありますが、EVはまだキャズムを超えておらず、成熟には時間がかかるという見方もあります。そのなかで、Mazdaはハイブリッドや内燃機関(ICE)の高効率化によって収益基盤をしっかりと支え、“守りながら攻める”戦略を堅実に貫いている印象です。


🧩MazdaがUnityと提携!?

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1575068.html

Unityといえば、ポケモンGOでも使用されている世界No1シェアを誇るゲームエンジン。「Mazda、ゲームでも作るのか!?」と思いきや、実はHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)開発での活用が狙いです。

最近のクルマは、車内のメーターパネルもセンターコンソールもタッチパネル。まるでスマホのようなUIUXが求められています。将来、自動運転が進めば、車内は「第2のリビング」へと変わるのです。

💡 Unityによって実現できる未来の車内体験:

  • 3Dで走行マップや周辺情報を可視化
  • 映画やゲームを3Dで展開
  • 生成AIと連携したパーソナライズ空間の実現

Mazdaの今回の提携は、単なる技術導入ではなく、車室空間そのものの価値を再定義する戦略的な一手。地味だけど、かなり面白い動きだと思っています。さすがMazdaさん、目の付けどころがいい。

HMIサンプル.png.webp

HMIとは・・https://www.jsae.or.jp/knowledge/a-z/detail13/

近未来のHMI.webp.webp
自動車の車内空間は、リアルタイムな3D表現が当たり前になっていく・・・


⚠ 日産、大丈夫か?

最近、日産はトップ交代の報道をはじめ、再び話題の中心に。ですがその背景には、組織の根本的な迷走とビジョン不在が見え隠れしています。


▶ ゴーン氏退任以降の業績悪化

日産といえば、カルロスゴーンさんを覚えていますか?

実は、2018年11月にゴーン氏が逮捕され社を去った直後から、日産の業績は急速に悪化しているんです。2019年度Q1では、売上−12.7%、純利益−94.5%という急落を記録しました。

ゴーン氏は、1999年にCOOとして就任し、「日産リバイバルプラン」を掲げて縦割り文化を打破。クロスファンクショナルチーム(CFT)を導入し、2000年3月期には6,843億円の赤字を出していた日産を、2006年には営業利益8,718億円まで回復させていました。

カスロスゴーン.jpg.webp

▶ 徹底したコストカットの象徴

ゴーン氏は細部までコストを見直す“狂気的なコストカッター”としても知られています。象徴的なのが、後部座席のシガーライター廃止。1ドルでも削れるなら削る、という徹底ぶりは賛否を呼びました。確かに日産の投資家目線で見ると評価される手腕なのですが、社内で共に働く日産従業員は疲弊し、非常にストレスフルな労働環境であったことは容易に想像できますよね・・・。


▶ゴーン氏が日産にもたらしたもの

ゴーン氏の経営スタイルは独裁的と評されることもあり、社内で敵を作りやすい一面は確かにありました。ただ一方で、「コミットメントは必達」という強いリーダーシップを武器に、日産を再建へと導いたのも事実です。

2017年にゴーン氏が社長兼CEOを退任した時点で、日産の時価総額は約4兆円。しかし現在は一時は1.2兆円台まで下落し、企業価値のおよそ75%が失われたとも言われています。

ゴーン氏の退陣後、日産は「ビジョンが見えない」「業務効率に対する理解が欠けている」との指摘が相次ぎ、組織としての推進力を欠いている印象は否めません。たしかにゴーン氏のやり方には賛否がありますが、それ以上に“強い意志と明確な方向性を持ったリーダー”の不在が、今の日産の混迷を象徴しているように見えます。


⚓️Mazdaは車内体験を進化させ、日産は舵取りに迷う。

Mazdaの取り組みは、自動車業界が「走る機械」から「体験の空間」へと進化していることを象徴する動きです。従来のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を再設計し、車内をデジタル体験の場として再定義する試みは、まさにSDV(Software Defined Vehicle)時代の先取りとも言えます。一方で、日産はトップ交代という大きな転機に直面しています。ゴーン時代に築いた強力な改革と、その後の迷走。いま、企業としての意思決定の軸が問われています。

Mazdaの戦略的なテック導入と、日産の組織的な混乱。この対照的な動きからは、自動車産業がいかに分岐点に立っているかが浮かび上がります。変化に前向きな企業が次の時代の主導権を握る、その現実が少しずつ見えてきています。自動車産業は“今までの延長線では戦えない”時代に突入しています。


ご意見・ご感想・ネタ提供も大歓迎です!
それではまた来週。
シロウサギ🐇